• Daisuke Matsuura

元・アルゼンチン代表監督マルセロ・ビエルサ氏が語るサッカー哲学と映像分析の重要性(サッカー)

最終更新: 8月24日



はじめに』

今回は、サッカーの分析に関するお話です。

アルゼンチン出身のコーチ兼アナリストである、マティアス・ナバロ・ガルシア氏に、彼のコーチ人生の中で最も大きな影響を与えた指導者について語って頂きました。

ガルシア氏が最も影響を受けたコーチとは、同じくアルゼンチン出身のサッカー監督

マルセロ・ビエルサ氏

です。

マルセロ・ビエルサ氏は、アルゼンチン代表、チリ代表の監督はじめとして、様々な国の代表チーム、クラブチームの監督として、今現在も活躍しています。2001年に国際サッカー歴史統計連盟 (IFFHS)で最優秀代表監督に選出され、また、2009年には、南米年間最優秀監督賞を受賞しました。戦術に対して深い造詣を持ち、趣味がサッカーの映像収集であることもあり、「エル・ロコ」(変人の意)の異名を持つ、世界的にも有名なサッカー指導者です。

そんなビエルサ氏の元で一緒に働いたガルシア氏に、ビエルサ氏のサッカー哲学について語っていただきました。

それではさっそく、聞いていきましょう

『ビエルサ氏が持つ、サッカーのための分析3原則』

サッカーの世界で、ビエルサ氏よりも、サッカーに対して熱心で綿密な人を見つける事は、難しいでしょう。

現在、イングランドのクラブチーム(リーズ・ユナイテッド)で監督をしている彼は、常に最先端の分析方法を模索し、試合中に起こる不確実な出来事を可能な限りをコントロールしようと、徹底した努力を行っていました。

2012年には、当時スペインのFCバルセロナを率いていた、世界で最も有名な指導者の1人であるジョゼップ"ペップ"・グアルディオラ氏が、

「ビエルサは私のチームを、私よりもよく知っている」

と彼の仕事を称賛していました。

彼は約30年の指導者としてのキャリアを通して、彼独自の分析プロセスを磨き続け、分析における、3つの重要な原則を確立していたんです。

その3つの原則とは...


1、自チームの分析をする

2、相手チームの分析をする

3、サッカーそのものを理解する


です。

1つずつ、説明します。

『映像に基づく、根拠を持った改善』

1、自チームの分析をする

ビエルサ氏は、個々の選手の弱み、チーム全体の弱みを克服するために、頻繁に映像を使用していました。



彼はまず、各選手に映像を使って、プレー時の意思決定について理由を尋ねていました。

また、それだけではなく、世界中で活躍しているエリート選手やライバル選手の動きを参考に、優れたプレーを選手に見せたりもしていましたね。

さらに映像による分析は、個々の選手のレベルアップのためだけではなく、クラブ全体を評価するためにも活用されていました。

ビエルサ氏は、新しいシーズンを迎える前に、前シーズンのチームの弱みがそのまま持ち越されないよう改善に努めるため、チームのあらゆる点を綿密に評価していたのです。

彼のシーズン前の分析プロセスは、このような内容でした。

・前シーズンの全ての公式試合、練習試合を確認する

・選手の判断や遂行力に関わる、良いシーンと悪いシーンのクリップと統計データの収集

・オフェンスとディフェンスの両面で、改善点を知るために画像やアニメーションを用いた映像を作成

これら分析した情報に基づいて、試合の状況に近いトレーニングを設計します。

その後、準備した映像を使って「試合のどの部分を練習しているのか」を選手に理解させるのです。

ビエルサ氏は、こういった分析データを、クラブのテクニカルチームと共に、自ら収集していました。

統計データを集計・提供しているデータ会社は数多くあります。ただ、彼はそれよりも、自身で映像分析ソフトを使用し、彼独自の観点や定義に基づいてデータを収集をすることを好んでいました。

2、対戦相手を分析する

アルゼンチン出身の彼は、あるときこのようなことを言っていました

「私は英語は喋れない。ただ、チャンピオンシップを戦う24チームの事ならいくらでも話せるよ」

彼は、対戦相手の詳細な分析にも、余念がありませんでした。

対戦相手の様々な情報を得るために、前シーズンと今シーズンの各試合を2回ずつ観察し、その後に次の3つのレポートを作成していました。

(1)、各チームを分析したタクティカルシート

(2)、各プレーを記録したイベントリスト

(3)、セットプレーを分析したタクティカルシート

(1)各チームを分析したタクティカルシート

このレポートには、次の内容が整理されています。

-試合開始時のラインアップ

-ゲーム中のポジショニングの変化

-対戦相手に応じて使用した戦術の、使用時間や割合

これらを調べて、どの戦術が容易に対応でき、逆にどの戦術に対策が必要か、を突き止めるようにしていました。

ビエルサ氏のチームを分析するための戦術シートの例



(2)各プレーを記録したイベントリスト

ここには、


-ゴールシーンとその状況

-シュートまでのアプローチ方法

-ポゼッションコントロールの方法(5分刻みでの変化を観察)

が記載されており、これらを詳細な説明と画像を付けて、分析レポートとして作成しています。



(3)セットプレーを分析したタクティカルシート

フリーキックやコーナーキックなどの、セットピースについては

-プレー関わる選手

-セットプレーのための合図や動き

これらを、オフェンスとディフェンスの両方で整理していました。



これらのレポートを作成した後は、各チームのオフェンスとディフェンスをまとめた約40分の映像を作成します。

「これらの資料を確認すれば、相手のオフェンスとディフェンスの弱点を、簡単に見つけることができるんだ」と彼は言っていました。

さらに、これらの情報は選手用に15分前後の映像(オフェンス、ディフェンス各7~8分程度)に整理され、選手が集中力を持った形で理解できるように工夫して、提供されていました。

3、サッカーそのものを理解する

彼は、チームを直接指導していないときも、向上のための努力を欠かしていませんでした。

コーチ仲間とグループを作り、時代と共に変化していくサッカーを、今までよりも深く理解しようとに、常に研究していました。

時間がある時は、自チームの試合の観察と分析を繰り返し、分析時の方法論や基準の改良と確立にも取り組んでいましたね。

例えば、彼は ...

「得点するための方法には、11種類に分けられる」

「基本戦術は10種類とその変化形に整理できる」

「ミスには5つのパターンがある」

など、試合の分析内容を元に、裏付けを持った数字として、彼の理論を作り上げていました。

『プロフェッショナルとしての絶え間ない成長』

ビエルサ氏と映像分析は、切り離すことができません。

・自チームについて詳しく理解すること

・対戦相手を分析すること

・継続的に変化するサッカーそのものを理解すること

彼と一緒に働くのであれば、上記3つは欠かすことはできないでしょう。

彼と共に戦っていたすべてのスタッフは、プロフェッショナルとしての絶え間ない成長を求められてきました。

これが、マルセロ・ビエルサ氏と共に働いて感じた、私が影響を受けたのサッカー哲学です。

翻訳参考元

https://www.nacsport.com/blog/en-gb/Users/marcelo-bielsa-and-the-importance-of-video-analysis


『さいごに...』


いかがでしたでしょうか?

今回で感じたことを一言で表すと「これが世界で活躍する監督の仕事なのか」ということでした。

分析のプロセスが明確化され、また、常に成長を求める彼の姿勢に対して、驚きを隠せませんでした。

記事を整理しながら、30年で培われた彼の仕事ぶりに感銘を受けました。

スポーツは違えど、同じコーチとして見習いたいと感じたことがたくさんあります。

特に、サッカーを研究するために、コーチ仲間でグループを作っていたことは大きな学びの1つです。

スポーツの変化を学ぶ重要性は、サッカーのみならず様々なスポーツにおいても当てはまるのではないでしょうか。

これらかも、このブログを通じて、皆様と共に学んでいければと思っております。




『筆者 Daisuke Matsuuraについて


関西大学大学院卒。オーストラリア、ニュージーランドでラグビーコーチング、分析等を学び、現在はニュージーランドと日本でラグビーコーチ/アナリストとして活動中。コーチとして、ラグビーワールドカップの優勝を目指している。今後は、ヨーロッパやアルゼンチンへ活動を拡げようと計画中。言葉、映像、環境を操り、人との繋がりを大切にして、選手のパフォーマンス向上とチームの勝利を目指しています。

SNSにて、最先端のラグビーコーチ、アナリストとしての活動内容を日々投稿中!!

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