『2019年FIBAワールドカップ優勝、FIBA世界ランク2位のスペイン代表バスケットボールチームによるパフォーマンス分析』
更新日:2022年5月31日
現在、スペインのバスケットボールチームは、黄金期を迎えています。
彼らは2019年にFIBAワールドカップで優勝し、現在、FIBA世界ランキングで米国に次ぐ2位の座にいます。
こちら記事は、黄金期を迎えているスペイン代表バスケットボールチームの、チーム構造、ビデオ分析について、ビデオ分析初心者の方にもわかりやすく書かれています。
みなさん、スペイン代表が成功している秘訣に興味はありませんか?
僕も読者の皆様と同じように【彼らが成功している秘訣】に興味があります。
今回の記事では、
・スペイン代表のスタッフ構成
・スペイン代表チームのコーチングスタッフの役割分担
・スペイン代表チームのビデオ分析
について皆様に紹介したいと思います。
それでは、いきましょう!! 〜目次〜 スペイン代表チームのコーチングスタッフ
チームを成功に導く秘訣
各スタッフの役割分担と作業構造
分析作業の目的
選手に見せるビデオクリップを決める
『スペイン代表チームのコーチングスタッフ』 現在スペイン代表チームは、イタリア人コーチのセルジオ・スカリオーロ氏が率いています。
彼の周りにはいつも多才なアシスタントスタッフが揃っています。しかし、アシスタントスタッフは、いつも同じというわけではありません。
通常であれば、人が変われば、仕事が難しくなったり、スタッフ間のチームワークが乱れたりと様々な問題が生じそうです。しかし、セルジオ氏は、アシスタントコーチの仕事をうまく構造化しているため、人が変わったとしてもチームに支障をきたすことはありません。 世界チャンピオンになるためには、素晴らしいスタッフが必要です。
チームにはフィジオセラピスト、トレーナー、メディカルに加えて、通常、4〜5人のアシスタントコーチが同行しています。
スペイン代表では、アシスタントコーチは、コーチとしての仕事だけではなく、ビデオ分析の作業も担当しています。

『チームを成功に導く秘訣』 チームを成功させた秘訣は、【準備の準備と役割分担】にあります。
大規模なトーナメントの場合、「準備の準備」がたいへん重要になります。
トーナメントは一度始まると、空いている時間はほとんどありません。そのため、対戦相手よりも常に先手を行くためには、トーナメントが始まる前に、多くの準備の準備を終えておく必要があるのです。 具体的に何をするかというと、
トーナメント中と、トーナメント前に行われるすべての作業の調整、および整理を行なっているのです。
これにより、各スタッフの役割が明確になり、さらに作業を分担することで、より効果的な仕事ができるようになります。

『各スタッフの役割分担と作業構造』
グループとして、作業を効率的に行うためには、適切な構造が必要であり、各々の役割を明確に定義し、作業に明確な目的を持たせる必要があります。
スペイン代表では以下のように分析作業が分担されています。
•テクニック、戦術的、統計的にみた各選手の特徴
•攻撃、守備、および特別な状況でのチームパフォーマンス
これについては、もう少し詳しく見てみましょう。
-攻撃分析
これを担当するコーチは、試合とトレーニングの両方の攻撃を分析します。もちろん、対戦相手の攻撃分析も行います。
そして、その分析結果を元に個人レベルとチームレベルの両方の成長を促すのです。
-守備分析 一方で、これを担当するコーチは守備に焦点を当て、試合、トレーニング、対戦相手の分析を行います。
スペイン代表のスタッフ間のチームワークは良く、いつも攻撃担当、守備担当のコーチがお互いを支え合っています。
-特別な状況の分析
ウィング、ベースライン、またはタイムアウト後に発生するプレーや、試合の勝敗を分ける重要な瞬間に発生するプレーを分析します。
-統計学を用いた分析 上の分析に加えて、統計学を用いた分析も行います。統計はどのスポーツにおいても非常に重要な情報源です。一般的に、バスケットボールチームでは試合の特定の部分の情報を、統計学を用いて絞り込みます。 しかし、統計には大量のデータを使用するため、コーチングスタッフの一人がこの統計のみを担当しています。彼はすべての情報の収集、解釈、フィルタリング、および情報の共有に責任を持って仕事をしています。
最後に、各コーチが作成したデータを統合します。
データは正しくまとめられていないと効果的とは言えません。そのため、スペイン代表は、コーチたちが作成したデータをまとめて準備し、利用できるようにするためのコーチがいます。 彼はすべてのデータをまとめて統合し、膨大な情報に秩序を与え、誰もがアクセスしやすいように努めます。これにより、コーチたちは様々な情報にアクセスしやすいだけではなく、割り当てられた領域をより深く掘り下げることができるのです。
『分析作業の目的』
分析作業の主な目的は、チャンピオンシップで勝利をするために、可能な限り完全な準備をすることと、可能な限り多くの情報を入手することにあります。
大規模なトーナメントでは、通常2日ごとに試合が行われるため、試合の合間に準備をする時間はほとんどありません。
そのため、次の試合の準備は、試合の終了と同時に始まるのです。
各コーチの役割はすでに明確なので、自分の担当範囲の分析を試合終了からミーティングまでに行います。
その後、スタッフミーティングでは、各々持ち寄った分析を元に、練習前のミーティングで使用する映像を共有します。
『選手に見せるビデオクリップを決める』
選手は試合で疲労しているため、映像が肉体的、または精神的に過負荷にならないようにすることが重要です。つまり、慎重にクリップを選択する必要があるということです。そのため、コーチたちは膨大な量のデータをできる限り簡潔で明確なメッセージになるまで内容を吟味します。
チームミーティングの目的の1つは、積極的な強化です。
そのために、スペイン代表チームは、試合の良いシーンをよく褒めるように心がけています。
これはチームの士気を高めるのに役立ちます。
それだけではなく、改善点も選手に共有します。
ミーティングでは、「褒める点」と「改善点」の微妙なバランスを保つことが重要になります。
これらの絶妙なバランスが取れた時、チームの士気を高めつつ、積極的に改善、強化することができるのです。
以上でこちらの記事を終わりたいと思います。
〜感謝〜
記事の作成に協力して頂いたスペイン代表バスケットボールチームのスタッフ、及び関係者の方々には本当に感謝しております。
『最後に・・・』
いかがでしたでしょうか?
スペイン代表バスケットボールチームが過去数年間に渡って行ってきたビデオ分析作業について纏めました。
この作業方法は、間違いなくスペイン代表を世界トップの座に導いた要因の1つだと思います。
結果を出したチームからは、たくさん学ぶことがあります。
この記事で紹介した、スタッフの役割分担、分析内容、選手への見せる情報の吟味など、もしあなたのチームに取り入れられる部分がありましたら、ぜひお試しください!!
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『筆者 Daisuke Matsuuraについて 』
関西大学大学院卒。オーストラリア、ニュージーランドでラグビーコーチング、分析等を学び、現在はブラックラムズ東京でラグビーアナリストとして活動中。コーチとして、ラグビーワールドカップの優勝を目指している。今後は、ヨーロッパやアルゼンチンへ活動を拡げようと計画中。言葉、映像、環境を操り、人との繋がりを大切にして、選手のパフォーマンス向上とチームの勝利を目指しています。
SNSにて、最先端のラグビーコーチ、アナリストとしての活動内容を日々投稿中!!