対戦相手を丸裸にする?!主要パフォーマンス評価指標(KPI)とは?(サッカー)

スペインのサッカーのコーチ兼アナリストであり、フィンランドでも豊富な経験を持っているセルジオ氏にお話を伺いました。
前回の記事で、セルジオ氏は【対戦相手の分析の方法】について話してくれました。この第2弾では、対戦相手を偵察する時に重要な主要パフォーマンス評価指標(KPI)についてお話をしていただきます。
セルジオ氏の対戦相手の分析の方法について知りたい方はこちらよりご覧ください
〜目次〜
主要パフォーマンス評価指標(KPI)とは?
防御分析とKPI
攻撃分析とKPI
ゴールキーパー分析とKPI
トランジッション分析とKPI
セットプレー分析とKPI
フリーキックとKPI
それでは、セルジオ氏の記事に入っていきましょう!!
『主要パフォーマンス評価指標(KPI)とは?』 これからお話しするKPIとは、次の対戦相手を分析するために使用するためのものです。特に、定性的情報を確認するためにあります。また、KPIは対戦相手の意思決定のパターン、動きとフォーメーション、位置、リンク、個人選手に焦点を当てて分析をするため、対戦相手によって形や中身は異なります。 対戦相手がどこでどのように、
攻撃を仕掛けてくるのか・・・
プレッシャーをかけてくるのか・・・
そして、それらを受けることで、私たちがどの程度ダメージを受けるのか・・・
を見つけだします。 そして、これら定性的情報と定量的情報から、対戦相手がしてくることを予測し、試合中に受けるダメージを最低限に減らせるよう1週間のトレーニングを計画するのです。 私たちはKPIに特別な注意を払います。
これらは、自分たちのゲームプランにも使用されるからです。
〜私たちはこうやって分析する!!〜
次の対戦相手が、私たちと似たフォーメーション、またはゲームプランを持つチームに直面した時に、どのような試合をするのかをKPIにまとめるようにしています。

『防御分析とKPI』 ①ゴールキック •ショート、ミディアム、ロングのゴールキックの頻度(マップ) •ゴールキックの侵入エリア(マップ) •ゴールキックを頻繁に受ける選手と、ボールを受け取った後の行動(マップとビデオ) •スペーシング(マップ) 私たちがゴールキックを分析し、トレーニング取り入れる理由は、予測可能であるからです。
そのため、コーナーキックやフリーキックなどの他のセットピースとは別のKPIを作成することがあります。
この情報は、対戦相手に普段とは異なる方法でプレーをさせ、対戦相手を混乱に導き、自分たちで試合をコントロールするのに役立ちます。 例:センターバックがゴールキックを受け取ったときにコントロールが弱くなることを発見!!
この場合は、相手のセンターバックに余裕ができるように、こちらの選手を配置すると同時に、すぐにそのエリアを埋められるようなポジショニングを用意します。つまり、相手チームのゴールキーパーにセンターバックにパスするように導くのです。これにより、有利に試合を進めることができる確率が高くなります。
そして、どのようにプレッシャーをかけるかを考えます。 例えば、センターバックの選手がロングキックを使ってプレーすることが得意だとします。
どこにロングキック行うのか、対戦相手がどこのエリアから攻撃をすることが得意なのかを統計的に調べます。そして、そのエリアにいる対戦相手のフォワード、または、ミッドフィールダーの選手にマークを付けて、センターバックの選手にショートパスを促します。そうすることで、対戦相手のエラーを導くことができるのです。
②ゲームの入り方とボールの動かし方
•スペーシング(マップ) •パスのパターン(マップ) •センターバックから前方へのパスを使用した攻撃のエラーの割合(マップビデオ) •自陣、個人、センターバックとウイングに注意をする、誰がどのようにボールを失うのか。ロングパスを良く使用する場合は、空中戦も確認する •パスとその結果の類型を探す(マップビデオ) •エラーが多いエリアと攻撃頻度が高いエリアを見つける(マップビデオ)


どこで、どのプレーヤーがよくプレッシャーをかけてくるのかを知っておくことは重要です。攻撃成功確率の高いエリアを発見した場合は、相手が最も快適で、私たちにとっては最も危険なパスパターンを成功させないように、ラインに圧力をかけて、そのエリアをカバーすることも大切です。 さらに、パス効率が悪いエリアや選手に、ボールがいくようにプレッシャーをかけていきます。
③フィニッシュゾーン
•予想されるゴール、(ゴールの確率を示す統計) •ショットとのクロスのパーセンテージ(マップ) •成功率とクロスの最も頻繁なエリア(マップビデオ) •ショット(マップ) •パスが最終的にアシストになる確率 •キーパスの割合が最も高いゾーンと選手(マップとビデオ)

どんなに細かいことでも、対戦相手の得点チャンスを防ぐのに役立ちます。そのため、私たちは常に、対戦相手が頻繁に使用する攻撃パターンを選手に知ってもらいたいと考えています。
『攻撃分析とKPI』 ここでは、攻撃構造を考える時に使用するKPIと、対戦相手の防御構造について説明します。 ①ゴールキック
•スペーシング •センターバックの空中戦 •ボール再獲得とファンブルボール
•スティール、タックル、インターセプトの割合が最も低い選手/ゾーン 対戦相手の弱点に応じて、攻撃をどこに仕掛けるべきかを知る必要があります。もちろん、定量的なデータだけではなく、定性的な側面がなければ、これを確認することは非常に困難となります。
②ゲームの入り方とボールの動かし方
このセクションでは、どのように攻撃し始めるか、どの選手を起用することで攻撃が有利になるのか、対戦相手の弱点の理由を見つけることにあります。 •ライン間の距離、選手間のズレ、高さ、スペースを見て、攻撃しやすいスペースを見つける •ボールの再獲得とファンブルボールを確認する •防御確率が高いゾーン/選手 •スティール、タックル、インターセプトの割合が最も低い選手/ゾーン •防御アクションごとのパスの割合(PPDA)(攻撃チーム(対戦相手)が行ったパスの数を防御アクションの数で割ったもの)
③シュート
•ゴールだった可能性が高いゴール •他のチームがシュートするクロスのパーセンテージ(マップ) •他のチームによる最も頻繁なクロスエリア(マップビデオ) •他のチームによるゴールへのキックとショット(マップ) •他のチームによるキーパスの割合が高いエリア(マップとビデオ) •そのエリアとその周辺エリアでのリカバリー(マップ)
『ゴールキーパー分析とKPI』 ゴールキーパーコーチは、対戦相手のゴールキーパーの長所と短所の詳細な分析をします。
•ゴール確率 •セットプレー中の行動のパターン

『トランジッション分析とKPI』 このセクションでは、ゾーン別、および選手別の【ボールの失い方】と【リカバリー方法】に焦点を当てます。 重要なことは、ボールを失った後に何が起こるかです。動画を使いゾーンと選手を分析することで、攻撃と守備が入れ替わる瞬間、混乱の中の情報を得ることができます。
トランジションの瞬間の防御、および攻撃構造に関して、様々な情報を見つけることができます。これは、対戦相手がボールを失った、勝ったときのパターンを見つけるのに役立ちます。
『セットプレー分析とKPI』 攻撃 •最も頻繁で効果的なエリア/シューター(コーナーフリーキック-ペナルティ) •クロスのタイプ(オープン/クローズ/ショート) •これらのアクション中のゴール(選手)とそのパーセンテージ •スペーシング

『フリーキックとKPI』 防衛 •最も頻繁に狙うエリアとそれらが最も効果的なエリア •クロスのタイプ(オープン/クローズ/ショート) •空中戦で最も効果的な選手 •スペーシング •ゴールキーパーレポート
『最後に・・・』
情報は力です。 私たちは常に、ライブ分析、遡及的分析(事象を遡りながら分析する方法)、およびデータソースから取得したすべての情報が、選手たちに最も簡単な方法で最高品質の情報を提供できるように努めています。そして、対戦相手の定性分析と定量分析を組み合わせることで、チームを勝利に導くことができると確信しています。 以上です。私たちのブログのために多くの時間を割いてくれた彼に感謝したいと思います。
いかがでしたでしょうか?
KPIにあまり馴染みのない方も多いのではないでしょうか?トップチームは、レポートとしてKPIを作成し、チームに提出します。KPIは、チームによって様々です。また、形式はコーチによっても変わります。アナリストであれば、コーチと相談して作成することをお勧めします。そして、まさに、今僕たちがコーチと話し合い、来年のKPIを作成している所です。
様々なKPI見て感性を養い、どんな要望にも答えられるようなっていきましょう!!
お読み頂きありがとうございました。
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『筆者 Daisuke Matsuuraについて 』
関西大学大学院卒。オーストラリア、ニュージーランドでラグビーコーチング、分析等を学び、現在はリコーブラックラムズでラグビーアナリストとして活動中。コーチとして、ラグビーワールドカップの優勝を目指している。今後は、ヨーロッパやアルゼンチンへ活動を拡げようと計画中。言葉、映像、環境を操り、人との繋がりを大切にして、選手のパフォーマンス向上とチームの勝利を目指しています。
SNSにて、最先端のラグビーコーチ、アナリストとしての活動内容を日々投稿中!!