複雑を単純にする
更新日:2021年3月21日

今回は、グロスターラグビーのパフォーマンス分析責任者であるルイス氏の連続投稿第4弾を紹介していきたいと思います。
前回の投稿では、ビデオ分析ソフトウェアをSportscodeからNacsportに変更の際について語って頂きました。そして、今回のブログでは、ソフトウェア内での効果的なワークフローを設定するためのプロセス、また、より高度なNacsport機能(パネルフローやクラスターボタンなど)がスポーツ分析のレベルを高めてくれる事について教えて頂く事ができました。
ルイス氏シリーズは以下よりご覧いただくことが可能です。
#2 アナリストとしての役割。コーチの負担を減らし、新しい方法を確立する。
さて、これからはルイス氏にバトンを渡していくとして、効果的なワークフローとNacsportの高度な機能について見ていきましょう!!
『最初が肝心:フォルダー整理が作業の効率化に繋がる』 2016/17シーズンの終わりにNacsportへの移行が承認されました。オフシーズン中だったこともあり、新しいハードウェア環境を設定するためには、十分な時間があり、また、プレシーズンをうまく使用する事ができ、9月にある大会まで、様々な必要リソースを開発する事ができました。 私たちが最初に行った事は、Nacsportデータベースの【ファイルの名前付けプロトコルの作成】と【ファイルを収納するフォルダー構造】を設定することでした。 これにより、複数のNacsportデータベース間で使用できるツールを最大限に活用することができました。例えば、映像のカテゴリー、ディスクリプターの組み合わせを簡単に検索する事ができ、複数のデータベースから作成されたダッシュボードを開く事が可能になります。
【検索ツールとダッシュボード】はNacsportソフトウェアの非常に強力なツールです。単純なプロセスですが、Nacsportデータベースに意図的に名前を付けて構造化された方法で保存することで、これらのツールを最大化する事ができます。どちらのワークフローも、システムの鋭い洞察力、効果的な構成、および先見性を理解することが重要となります。 また、これから説明する事は、それほど重要に聞こえないかもしれない事の1つかもしれませんが、すべてのラップトップとサーバーをミラーリングして整理しておく事は、今後の作業プロセスにとって非常に重要なものとなります。 「私たちが物事を忘れたり失ったりしないようにするために、最も重要なマインドを整理するための原則は、組織化するための負担を脳からなくす事です。」 Levitin, D. (2014). The Organised Mind: Thinking straight in the age of information overload
『複雑なプロセスを単純なモノに変え、誰でも使用できるようにする』 そして、次にチーム、各選手のためのボタンテンプレートとダッシュボードを作成しました。また、ラグビーのセットピース要素を分析するワークフローを設計すること、そして、私の担当でもあった、コーチ、選手間でファイルを共有するためのプロセスを完成させました。 驚くことに、コーチたちは、私たちが開催したワークショップからNacsportに関する知識を得て、トレーニング映像をカットしアニメーションを加えながら、コーチ自身で分析作業をできるようになっていたのです。これにより、コーチに時間を奪われる事がほとんどなくなり、優先しなければならない分野に集中できるようになりました。そして、その時間を利用し、選手たちがNacsportViewerをうまく使用できるようにする事が可能になりました。 システムの評価に費やした間、Nacsportの開発は非常に忙しかったと思います。彼らは、既存のツールや開発中のツールに関するフィードバックを前向きに受け止めてくれました。そのフィードバックから多くのアップデートがありました。そのアップデートの中に【パネルフローとクラスターボタン】の2つがあったのです。 開発中に両ツールのプレビューがあり、使用してみたところ、ボタンテンプレートの作成に与える影響は明らかでした。実際、これら2つの機能だけで、私が以前から取り組んでいた課題を打ち破る事ができました。 テンプレートを作成するための私の哲学として、「ソフトウェアが提供するツールを最大化し、知的にシステム機能させ、一回のクリックの効力を最大限に活用すること」というものがあります。 私の意見ではありますが、シンプルな方法と高レベルの機能が組み合わさっている事が、成功するテンプレートを構築するための鍵だと思っています。
『アナリスト夢中にさせるパネルフロー』 Nacsportでのボタンテンプレート作成は、カテゴリーボタンとディスクリプターボタン、およびXY座標マップ(グラフィックディスクリプター)など、さまざまな役割をもったボタンをテンプレートパネルに広げることができるため、ボタンを追加し続けたいという誘惑に駆られてしまいます。しかし、これにより、必要以上にデータ収集してしまい、テンプレートの表記とボタンの繋がりが不必要に複雑になってしまう可能性があるのです。 ただし、パネルフローを効果的に使用すると、ボタン表記の繋がりが大幅に簡素化されるだけでなく、【ブロックディスクリプター機能】や、【パネルごとにクリック制限機能】を設定するなど、他の機能と組み合わせて使用することで、データ収集の精度が向上します。 ボタンを作成する前に、データ収集の観点から必要なもののフレームワークを正確にマッピングしました。これは、テンプレートのパネル構成を構築に役立ちます。 「単純なものは複雑なものよりも難しい場合があります。単純にするためには、思考をきれいにするため一生懸命努力する必要があります。しかし、そこに着くと山を動かすことができるほどの力を得ます。そのため、最終的にはとても価値があるものとなるのです。」 Beahm、G。 (2011). I, Steve: Steve Jobs In His Own Words
『1クリックでたくさんの情報を取得できるクラスターボタン』 クラスターボタンは、機能のレベルを大幅に向上させ、ボタンテンプレートの可能性を広げるもう1つの機能です。 Nacsportには、特定の動作を生成するために、さまざまなボタンをリンクさせるためのオプションがあります。私は、クラスターボタンを使用することが好みでした。チームパフォーマンステンプレートのホームパネル作成の際に、クラスターボタンは非常に高い柔軟性がありました。
また、パネルフローと組み合わることでさらにパワーを増します。 私たちが使用するチームテンプレートのホームパネルには、6つのボタンがクラスターとして重なり合っています。ここにはカテゴリーボタンとディスクリプターボタンが混在しています。クラスターボタンを使用する際は、クラスターの順序がとても重要でした
ディスクリプターを目的のカテゴリーに機能させるには、クラスターの順序を変える実験をする必要がありました。また、ブロックディスクリプター機能を使用すると、ディスクリプターが間違ったカテゴリーに分類されるリスクが非常に低くなりました。 相互に補完するツールの組み合わせを使用することで、高レベルで複雑なものを単純にする事を実現することができました。もちろん、テンプレートの作成方法に関しては複雑ですが、使用方法に関しては単純する事ができたのです。 テンプレートを作成する時は、変更や開発を行うたびに新しいバージョンを保存する習慣があります。それにより、気づけば91のテンプレートがありました。そして、ようやく複雑なシステムを簡単に使用できるボタンテンプレートが完成しました。 参考文献 Levitin, D. (2014). The Organised Mind: Thinking straight in the age of information overload Beahm、G。 (2011). I, Steve: Steve Jobs In His Own Words
『最後に...』
いかがでしたでしょうか?
本日もルイス氏にとても有益な情報を共有して頂けました。
簡単にまとめると・・・
複雑なボタンテンプレートを、【パネルフロー】と【クラスターボタン】を使用し、単純化し、コーチ、選手が使用できるようにした。そのおかげで、他の作業を行う時間が増えた。
アナリストの仕事は、分析だけではない事が感じられたんブログでしたね。
本日もお読み頂きありがとうごうございました。
Nacsportの公式SNSアカウントは以下から
『筆者 Daisuke Matsuuraについて 』
関西大学大学院卒。オーストラリア、ニュージーランドでラグビーコーチング、分析等を学び、現在はリコーブラックラムズでアナリストとして活動中。コーチとして、ラグビーワールドカップの優勝を目指している。今後は、ヨーロッパやアルゼンチンへ活動を拡げようと計画中。言葉、映像、環境を操り、人との繋がりを大切にして、選手のパフォーマンス向上とチームの勝利を目指しています。
SNSにて、最先端のラグビーコーチ、アナリストとしての活動内容を日々投稿中!!