フィンランドのサッカークラブで使用している『対戦相手を分析するプロセス』
更新日:2021年5月20日

セルジオ・アルメナラ氏
皆さんこんにちは!! 本日は、フィンランドのサッカークラブで働いているセルジオ・アルメナラ氏に『対戦相手を分析するプロセス』を伺いました。 なんと!!セルジオ・アルメナラ氏が所属しているクラブチームで実際に使用していて、成果を出している『対戦相手を分析するプロセス』を公開して頂きます。
このブログでは、『対戦相手を分析するプロセス』を3つのフェーズに分けて説明しています。
是非お読み頂ければと思います。
〜目次〜
フェーズ1:対戦相手の情報収集
①対戦相手の選手情報収集
②対戦相手のチーム情報収集
フェーズ2:2種類の情報を整理する
①定量的情報
②定性的情報
フェーズ3:選手に伝える情報を絞る
『フェーズ1:対戦相手の情報収集』
分析を始める前に、試合までの時間に基づき、準備できる情報は変化することを常に頭に入れておく必要があります。つまり、試合までに準備時間がたくさんある時もあれば、ない時もあります。また選手やコーチに伝える情報量が多い場合も、少ない場合もあるのです。
それでは、進めていきたいと思います。
①対戦相手の選手情報収集 私たちは、対戦相手の選手情報を集めるために、インターネット、ソーシャルメディア、クラブのWebサイト、スポーツマガジン、新聞、フォーラムなどから、対戦相手に関するおおまかな情報を見つけます。時には、各選手のSNSアカウントやWebサイトを調べることもあります。 また、他のクラブに、次の対戦相手について相談することもあります。これは非常に便利ですね。他のチームのコーチングスタッフと良好な関係を築くことで、それらが素晴らしい情報源となるので、様々な人との縁を大切にすることが重要です。

②対戦相手のチーム情報収集
統計データを提供している専門のスカウトウェブサイトをよく参照にしています。スターティングメンバー、控え選手、最新の結果、試合の傾向、得点傾向、チームの大まかな情報を見つけることが可能です。 これらのサイトでは、フォーメーションに関するデータも収集することが可能です。これらすべての情報は、実際に試合を見るときに、とても役に立ちます。
私たちのチームの現状では、時間がほとんどなく、ビデオ分析部門もアナリストもいないため、ライブで他のチームの映像を確認することはできません。そんな事もあり、昨年、私はヨーロッパリーグの対戦相手の試合を見るために海外旅行したこともあります。この難しい状況が明け、試合が再開されたら、またやりたいなと思っています。

『フェーズ2:2種類の情報を整理する』 次に対戦相手の情報をできる限り多く取得します。(通常過去3〜5試合) もちろん、すべての情報を使用するわけではありません。そして、先ほども言ったように、試合までの時間によって、情報の量は上下します。私の経験上、対戦相手に関する情報の質と深さは試合までの時間によって変わると言うことです。
また、情報の質に影響を与える可能性のあるものは他にもあります。たとえば、チームの今の状況です。選手の注意力、集中力、チーム環境、前の週の勝敗などです。結局のところ、私たちは人間であるため、様々なことに気を配ること重要なのです。
実際より多くの情報を収集することで対戦相手の質の高いトレンドを知ることができます。それら情報は試合までの準備をしっかりと支え、より明確なゴール、プロセスを得ることにも繋がります。

このフェーズはさらに2つに分けたいと思います。 ①定量的情報と②定性的情報の2つの観点から見たいと思います。
①定量的情報とは、サッカーで例えると、対戦相手選手がシュートエリアに入った回数、ボールを失った回数やボールを失う傾向がある場所、ボールを失った選手など、数、量を測ることが出来る情報のことを指します。
②定性的情報とは、簡単に説明すると、ゲーム自体を分析することで生まれた情報のことです。例えば、対戦相手が攻撃または防御で何をするか、どのように構造化され、いつ構造を変化させるか、どのようにチャンスを生み出すか、どこが弱いかなどの情報ですね。
私たちは、対戦相手チームと個人選手の両方について、出来る限り多くの情報を調べ、彼らの強みを探し、それらを無力化する方法を見つけます。これら情報はすべて、ゲームプランを作成する際に使用され、うまくいけば、勝つ可能性が高くなります。

『フェーズ3:選手に伝える情報を絞る』 最後のフェーズは、実際に選手に渡す情報を絞ることにあります。 この時点では、膨大な量のデータがあるため、コーチングスタッフ間で、どのデータを使用するのかを決めていく必要があります。選手たちには、可能な限り最小限で質の高い情報のみを渡す必要があるためです。例え、伝える必要があると感じる情報がたくさんあったとしても、選手に渡す情報は映像にして、約1分半以内にまとめるように心がけています。 また、この情報に基づいてトレーニングセッションを組む必要があることは言うまでもありません。対戦相手の情報に基づき、チームメンバー編成、さまざまなシナリオでのトレーニングをしていく必要があります。 そして、選手たちには常にフィードバックを求める必要があります。選手たちは映像分析をあまり意識しないこともあります。しかし、私たちが彼らに近づいていく必要があります。そうすることで、少しずつ選手たちは、分析に近寄ってきてくれ、その結果、勝利に近づくことが出来るのです。

今伝えたプロセスは常に流動的でもあります。常に拡張、縮小、そして変更しなければならない可能性だってあることを、常に意識してください。つまり、プロセスの変更に関しては、常にオープンである必要があるのです。 対戦相手を分析する方法はたくさんありますが、私たちは、現時点ではこの方法でしっかりとゴールを達成することができています。将来的には、より良いさまざまな方法や働き方が生まれることは言うまでもありません。
『最後に...』
いかがでしたでしょうか?
本日も、とても濃い内容のブログだったと思います。分析をチームで行っているのであれば、定量分析と定性分析を分けて行うことも良いかもしれません。
僕はアナリストとして、特に『選手に伝える情報を絞る』ことをとても繊細に行なっています。情報が多すぎるとパンクし、少なすぎるとスムーズにゲームを運転することはできません。ブログの最初の方にもありましたが、私たちは人間ですので、1週間で処理できる情報も限られています。選手をよく見て感じ、情報の取捨選択をしていくとチームをより良い状態にできるのではないでしょうか?
以上で終わりたいと思います。
お読み頂きありがとうございました。
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『筆者 Daisuke Matsuuraについて 』
関西大学大学院卒。オーストラリア、ニュージーランドでラグビーコーチング、分析等を学び、現在はリコーブラックラムズでラグビーアナリストとして活動中。コーチとして、ラグビーワールドカップの優勝を目指している。今後は、ヨーロッパやアルゼンチンへ活動を拡げようと計画中。言葉、映像、環境を操り、人との繋がりを大切にして、選手のパフォーマンス向上とチームの勝利を目指しています。
SNSにて、最先端のラグビーコーチ、アナリストとしての活動内容を日々投稿中!!